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【所員’s OFF TIME⑰】植物とのたたかい

植物とのたたかい
 わたくしども夫婦は、30年ほど前小さな一軒家を買いました。台所の東側は隣のマンションの大家さんの立派なお庭で、窓を開けると庭石や桜の木がチラ見できました。大家さんはマンションの一階に住んでいらしたのです。何年かして大家さんがお亡くなりになると、このお庭は荒れて行きました。モミジ、桜、松、柿の木が大木化し、下のほうは鬱蒼として日の光も入らない暗い空間です。ですが、我が家の台所の窓を開けると涼しい風が入ってきて、「なんか、ここだけ軽井沢みたいだねー」と我々は気楽に喜んでいたのです。そこからまた幾星霜。マンションの所有者も不動産会社に代わりました。ある日、隣の「森」からガガガガ、ゴゴゴ、とものすごい音が聞こえます。何事ならんと外に飛び出してみると、重機が入って大木化した庭木を伐採、根こそぎ引っこ抜いているのです。松や桜があられもなく根っこを空に向けて横たわっていました。そのあとはピターっとコンクリートが張られ、隣のマンションの駐輪場になりました。
 それからは、夏になると夜明けとともに台所の窓からぴかーっと太陽の光が差し込み、駐輪場のコンクリートの反射を受けて暑いことこのうえなく、うっかり窓を開けるとマンション住人の方のベランダが丸見えになってしまいました。「弱ったなー、朝顔かゴーヤでも植えようか…」と思いあぐねていたところ、ある日、塀と家の隙間の地面からするすると見覚えのあるつる草が伸びてきて、あっという間に窓の際まで覆い隠して、オレンジ色の花まで咲きました。こいつは、かつて隣の「森」で大木の上に覆いかぶさるほど繁茂していたノウゼンカズラです。コンクリートで覆われた地面の下で根っこが生き延び、我が家の隙間の地面を探し当てて爆発的に成長し始めたと見えます。ここで私が「ま、いいか、日よけと目隠しになるし」と思ったのが運の尽き。ノウゼンカズラは繁茂を続け、放っておくと窓と壁を覆いつくし隣の駐輪場・駐車場にも迷惑です。かくて私は毎年3,4回脚立に乗ってのこぎりを振り回し、ノウゼンカズラの枝とツルをむしり続けています。そればかりか、植えた覚えもないネズミモチノキも大木化して、チェーンソーでもないと対応不可となりました。
いつまでこのたたかいを続けるのか…。縄文時代の人もこんな気持ちになったことがあるかしら。「緑」も他人が管理してくれるなら気楽に楽しめるけど、自分の責任で何とかしようと思うとこんなにも厄介だとは。
 ま、ともかく今度は業者さんを頼むことにします。

所員S